Nikon Fの世界 第12話 コレクター保管品 奇跡のNikon F 赤点付き②(659XXXX)
こんにちはMinoluです。 前回に引き続き大変貴重なNikon F 659XXXX番の紹介です。
各部をしっかりと観察していきましょう。
↑ 右下のキズは脱着に伴うものだと思います。
シリアル番号の上にも劣化か汚れが見られます。通常整備ではごく軽く研磨して消すのですがこちらは現状保持を優先します。
↑ ファインダーからは見えないところですが劣化がみられます。
↑ ファインダーレンズの状態。ここはキズが付きやすいので触りたくありません。
コーティング劣化か油膜か判断が出来ていません。
↑ 脱着に伴うスレ傷あり。
↑ 2週間前にはなかったのですが、ファインダー内側に劣化モルト?が載ってしまいました。今後も増える可能性もあります。
↑ ファインダーを覗き込むと上の劣化モルトは見えずこのような感じです。
↑ 銘板に粒状の劣化が見られます。通常整備ではごく軽く研磨して消すのですがこちらも現状保持を優先します。
↑ ↓ フィルムガイドレールの状態が見やすくなるようアンダーで撮影しています。
こちらの状態はよさそうです。
↑ シャッター幕の状態です。
↑ フィルム押さえの盤もきれいです。(あくまで主観。。^^;)
銀色の底板にスレ傷みられます。
↑ 塗装が薄くなっています。
↑ 保護カバーがありますが汚れなのか劣化なのか黒い粒が見られます。
怖いのでカバーは触っていません。
↑ モルトによる腐食で緑青のような粒に変質しています。
↑ ここから付属レンズです。
↑ 後ろ玉表面にあるコーティング劣化のようもの。強い光を当てると見えます。
過去の所有者が格闘?した後が見られます。
したがってMinoluとしては状態保持を優先し触れません。
↑ 前玉から見た絞り羽の様子。
チリが少ないことが分かると思います。
↑ 後玉から見た絞り羽の様子。
チリが少ないことが分かると思います。
以上となります。
このカメラの説明につきましては こちらをご覧ください。
Nikon Fの世界 第12話 コレクター保管品 奇跡のNikon F 赤点付き①(659XXXX)
こんにちはMinoluです。 今回は大変貴重なNikon F 659XXXX番の紹介です。
手元に置いておくつもりでしたが、万が一私が今の状態を悪化させてしまっては、後世の方に申し訳ないので手放す決心をいたしました。(責任放棄??)
ただし未使用品ではなく、状態から見ると使用頻度がかなり少ない個体になります。
こちらがそのFです。
ほぼ間違いなく長年コレクターの方が大切に保管されていた奇跡のNikon F +50mm F2です。
そして驚くことに、元箱のほかに梱包箱まで残っており、その梱包箱にはカメラとレンズのシリアルナンバーの印字があります。
もちろんですが、このシリアルナンバーはここにある本体およびレンズと一致しています。
驚くべきことはそれだけではありません。
この奇跡の保管品は購入した時に箱に入っていた物がほぼそのまま残っているタイムカプセルです。
以下に列挙しますがすべて当時(1965年/昭和40年)のものです。
(2023年時点において58年も前のもの)
・取扱い説明書
・ニッコールクラブのご案内
・ニッコールクラブ申込書(未記入のも)
※入会金が100円だったのですね。
・ニッコールフィルターの使用説明書
・これらの用紙を入れる「NIPPON KOGAKU TOKYO」のビニール袋
・ニッコールレンズカタログ
・本体を包む「NIPPON KOGAKU TOKYO」のビニール袋
・「NIPPON KOGAKU TOKYO」のシリカゲル(乾燥剤)
・カメラ本体の底を保護するプラカバー
・元箱
・梱包箱
梱包箱は段ボール製でフタの蝶番にあたる場所はギリギリつながっている状態です。
「NIPPON KOGAKU TOKYO」のシリカゲルは初めて見ました。
そして使用感がほとんどない赤点付きNikon Fと50mm f2。
(レンズキャップは私が時代矛盾のないものを後付けしました)
こんなにもチリの少ない中古レンズは初めて見ました。
そしてPhotomicファインダー。
中古市場ではあまり人気のないPhotomicファインダーですが、このセットはPhotomicファインダーからPhotomic Tファインダー誕生の過渡期における生き証人のような珍品になります。
その歴史の記録という点において、当時非常に高価なこのカメラを撮影用の道具としてほとんど使うことなく、コレクションとして保管を決めた購入者の思いをはせて楽しむこともできます。
この赤点は当時新発売となったPhotomicTファインダーが装着できるように改造(ミラーボックスの一部を削って加工)されているということを示すマークなのですが、この赤点個体はPhotomicTではなく、赤点改造しているにもかかわらず最初からPhotomicが組み合わされているのです。
その証拠として梱包箱がとても大事な役目を果たしています。
この梱包箱はカメラのシリアルナンバーとそれが始めからPhotomicファインダーとのセットであることをキチンと語ってくれているのです。
カメラ本体の底を保護するプラカバーに割れもなく新品時のままです。
ただ、残念な点もあります。
「道具」はその機能をつかってやることで長生きします。
大抵の「道具」は使わなければ逆に劣化が進む場合があります。
こちらの個体も保管状態は比較的よかったのだとお見受けしています。
ただ2023年時点において既に58年が経過していますので、所処に経年劣化が出始めています。
大変残念ですが私にはこのFの劣化を止めることは出来ないので早めに責任逃れをさせていただこうと決心した次第です。
この貴重な逸品が誰か良い方の手に亘り後世に引き継がれることを願っております。
さらに詳しい状態については、こちらに多くの写真をアップしましたのでご確認ください。
Nikkor レンズの世界 第2話 NIKKOR-S Auto 5cm f2
こんにちはMinoluです。
今回はNIKKOR-S Auto 1:2 f=5cm、いわゆる5cm f2です。
最初期のチックマーク入りではありませんが9枚絞り時代の個体が入手できました。
このレンズが製造されたのは1960年あたりで、その翌年には6枚絞りに変更されたそうです。
この約60年以上前のレンズの描写力と9枚絞りのボケ味がどのようなものなのか試したくなりNIKKOR-H Auto 50mm f2と撮影比較してみました。
カメラはCANONのデジタル一眼にマウントアダプタを装着し絞り値は5.6で撮り比べました。
まず、1枚目。上が5cm、下が50mmです。
差が分かりやすい部分をトリミングしています。
RAW加工はしていません。
描写の傾向は非常によく似ていることが分かります。
背景の日が当たっている部分は50mm f2はどうしてもボケが6角形になり角が出てしまう分少しノイジーな印象になっています。
こちらは更にボケの形が分かりやすい状況で撮影してみました。
5cm f2は背景が丸ボケになり、柔らかい印象の画像になっています。
こちらはトリミングなしの写真です。
これはMinoluの保存機である黒F(725XXXX)です。
余談ですが特にレアな個体ではありませんが、使用によるスレが使い込まれたいぶし銀のような雰囲気たっぷりのFなので唯一手元に残している個体です。
話を戻しましょう。
こちらの写真はカメラ背後の樹木を見ていただけると印象の違いがよくお分かりいただけると思います。
描写力が分かりやすいように等倍以上に切り出してみました。
この時代のレンズなので色収差は仕方がないと思いますが、2400万画素のデジカメにも通用する当時のNikonレンズのシャープな描写力には驚くばかりです。
評判通りよいレンズでした。
Nikon Fの世界 第11話 Nikon F (6405XXX)
こんにちはMinoluです。
ついに640万番台の初期型Nikon Fに出会い大枚をはたいて買ってしまいました。
とても手元に置いておくほどの余裕はないので、手放す前に簡易な整備と清掃をしながらじっくりと観察しました。
入手できた個体は6405489。1959年末から1960年1月に作られた物です。
Nikon Fの640万番台の特徴については海外のサイトも含めたネット情報である程度の知識を持っているつもりでしたが、今回新たな発見もありましたので後ほどご紹介します。
また、市場では640万番台と称する個体をしばしば見かけるのですが、その多くが後の世のアイレベルファインダーと組み合わされた個体で、640万番台の時代のファインダーとの組み合わせは稀です。
さて、この個体はどうでしょうか。
まずは、よく知られた640万番台の特徴を観察していきましょう。
↓ ここのJAPAN刻印は見落とされがちです。
↑ 640万から642万あたりはこのパーツです。
↑PATナンバー刻印。
フォーカシングスクリーンには留め用のくぼみが4か所あります。
それではいよいよアイレベルファインダーを観察します。
「NIPPON KOGAKU JAPAN」の文字がプリントではなく刻印です。
これは紛れもなく640万番台のアイレベルの特徴です。
さて、ここからは新たな発見です。
共に前期型のアイレベルファインダーのカバーを外した物です。
左が今回の個体です。
プリズムを押さえている位置が違っています。
これを反対側から見ると小さなネジ穴位置が後世のものと違うので外観からも判断できるのですが、押さえ位置の違いによるものでした。
また、プリズムの上部には保護用?の薄いシートがあることがわかります。このシートはかなり劣化が進んでいましたが、オリジナル状態の保全のためそのままにしてカバーを戻しました。
そしてさらに新発見。
これはカメラ本体セルフタイマーあたりの貼り革(革ではありませんが)の裏側です。
左が今回の640万番です。
どちらも表側の材質は同じ感じなのですが640万番の裏面は布がベースになっていて繊維が見られます。
一方、それ以降の個体の裏側はビニール様の素材になっていてツルツルしています。
まだ細かい違いはありましたがネットに公開されていない情報でもあり、後世にお楽しみを残すべくベールにつつまれたままにしてMinoluの知ったかぶりはこの辺りにしておきます。
Nikon Fの世界 第10話 Nikon F (684XXXX)
こんにちはMinoluです。 今回は簡易整備が完了したNikon F 684XXXX番の紹介です。
684万番台なので富士山マークではない1967年製造の一般的な中期モデルです。
では、個々にその特徴を観察していきましょう。
ファインダーはフォトミックTNファインダーでロット番号は443395でこちらの製造年も1967年頃なので、恐らく最初からこのペアリングだった可能性があります。
このTNファインダーですが、入手時から露出計の針は光に反応していたのですが、残念ながら露出ズレが基板での調整レベルの範囲を超えていました。
そこで左右のcdsセルを交換しましたので、露出計は動くのですが製造時の純正cdsセルではありません。
アクセサリーシューの部品や巻上げレバー等、684万番台の部品と矛盾がないことが分かります。(ただ、この組み合わせはNikon Fの最も一般的なパーツですが。)
裏蓋のASA表示も400までとなっており、「MADE IN JAPAN」の刻印もこの当時の特徴を示しています。
セルフタイマーレバーも最も一般的なタイプですね。
各パーツについて684万番そのものなので、恐らく魔改造されたものではなさそうです。
次に状態を見てみましょう。
比較的キズも少なくNikon F としては良好な部類だと思います。
ミラーに浅い線キズが見られるのが残念です。
プリズムはファインダー側に剥離が少々みられます。
ファインダーから見た様子はこのような感じでスクリーンに少々ダメージがあります。
次に動作チェックです。
巻上げ感触は良好です。ガバナーも簡易整備で問題なく動作しています。
高速シャッターですがMinoluオリジナルの1/1000秒テストを行いました。
第6話でも紹介させて頂きましたが、
「デジカメで1/1000Sで露出が合うISO値と絞り値を調整し、絞り値とISO値はそのままでシャッター速度はスローにします。
Nikon Fは1/1000Sでシャッターが切れるようにセットし、デジカメのシャッターを押すと同時(シャッターが開いているタイミング)にFのシャッターを切ります。(下図)」(第6話から抜粋)
↓ テスト結果の写真比較です。ここでは明るさだけを比較します。
デジカメ写真よりもNikonFのシャッター利用の写真が明るくなっていれば、1/1000秒以下のシャッター速度ということになりますが、ほぼ同じ明るさであることが分かります。
この簡易検査では1/1000秒が出ていると判断しています。
今回はごくごく一般的なNikon Fのご紹介でした。
Nikon Fの世界 第9話 「【続】贋作Nikon F Black Body」(737XXXX)
こんにちはMinoluです。
今回は第8話でBlack Body化されたNikon New Fの続編です。
約1か月前はこのような有様でした。
コツコツと地道な作業を続け、何だかんだで約1か月もかかってしまいましたが、ようやくここまで剥がしました。
こちらが作業の成果です。
いかがでしょう。見違えたでしょ。
当初予想の通り、幸運にも何の下地処理もされていませんでしたので、きれいに剝がすことができました。
塗装の下からは、意外にもきれいなNikon New Fが姿を現してくれました。
まだ、別の整備中なので一部のネジを締めていないのと、ミラーも外しているのでボディーキャップをしています。
さて、実はまだ完成ではなく黒塗装を少し残しています。
記念すべき最後の一歩ではありませんが、長きに亘った剥がし作業の最後の「ひと剥がし」として、写真の赤丸部分を剥がすことで一連の作業を終えたいと思います。
分厚く塗装された部分はこのような形で最後まで残ります。
はい、これでようやく終わりました。
この狭い範囲だけでも、約3分くらいかかります。
もうお腹一杯なので2度と同じような個体に立ち向かうことはしないでしょう。(たぶん)
ところで、今回の作業は以下の強力クリーナーを使いました。
キャップの黒ずみが苦闘の証です。
(よく見るとFTNの前盤も少し汚れてますね・・・。作業中、指が真っ黒になるんです。)
今回の作業にあたっては、シンナーのような溶剤を使うと間違いなく樹脂バーツを溶かしてしまうので、良いものがないかと探してみると東〇ハンズでこのクリーナーに出会いました。
その結果、時間はかかりましたが、本体にダメージを与えることなく剥がすことが出来た次第です。
このFは737XXXX番ということも分かりました。
全ての部品がNikon New Fの737XXXX時代の部品でしたのでオリジナルのままだと思われます。
しかし、ここまで外装が綺麗な状態なのに、何故あれほどまで雑に黒く塗ってしまったのか不思議でなりません。
兎にも角にもこの個体は私が初めて手にした記念すべきNew Fとなりました。
動作も簡単な清掃整備で安定しそうな上々なレベルでしたので、もう少し整備を続けたいと思います。
Nikon Fの世界 第8話 「贋作Nikon F Black Body」(7XXXXXX)
こんにちはMinoluです。
興味深いNikon F Black Body?を見つけたので思わず購入してしまいました。
こちらのFです。
雑な仕事ですね。。。。(失礼)
面白い個体と言ってしまうと、普段から贋作と戦っているニコン党の御仁に大変失礼なのですが、こちらは贋作の域に達していないのと、「 Black Body」と主張した販売でなかったことから、あくまで偽物ではなく明らかな塗装品という位置づけで購入いたしました。
巻き上げレバーとセルフタイマーレバーから、この個体がNew Fである可能性を高めています。
Black Bodyであれば白い文字でアピールしている(マニアが気になる)製造番号までもが黒と同化しており正体不明の個体になっています。
ちなみに本来の Black Bodyの場合、塗装がはがれると、以下の写真のように塗装の下から味のある真鍮色が出てくるはずですが、何やらこれは違います。
(↑ 他のNikon F Black Body)
Nikon F は製造番号によっては、ン百万円越えの値が付くこともあり、特にそれがBlack Bodyであれば一層高くなる傾向があります。
そうなってくるとどうしても偽物が出てくるのは世の常で、Nikon Fの世界でも疑惑の88号機という逸話は有名な話ですね。
しかもどの製造番号がBlack Bodyなのか?という記録はどうやら残っていないらしく、世界にはそれを整理すべく調査をしている猛者もいらっしぃます。
その猛者によると、Black Bodyはある程度固めて製造をしたようで、連番で存在する傾向があるそうです。
また、赤点Blackについてはある程度の整理が終わっており、たとえシルバーの赤点をうまく黒に塗装したとしても、番号から塗装品だとわかるそうです。
さて、こちらの個体ですが言うまでもなく元シルバーボディですね。
各パーツを念入りに確認したところ、幸い「寄せ集め個体」ではなくオリジナルのNew Fと矛盾のないものでした。
幸か不幸か塗装の剥がれ具合から見て、下地処理をせずにラッカー様の塗料を筆でべったりと塗っただけのように見えるので、コツコツ作業をすればオリジナルの姿に戻せると思います。
それでは、これから剥がし作業に着手します。
整備が終わればまたご紹介させていただきます。